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音楽とお酒と歴史探索が趣味です。色々書きなぐってます。
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  プロフィール
HN:
赤澤 舞
性別:
女性
職業:
飲食店店員
趣味:
お菓子作ったりピアノ弾いたり本読んだり絵描いたり
自己紹介:
東京・神奈川・埼玉あたりでちょこまか歌 を歌っております。

一応声種はソプラノらしいですが、自分は あんまりこだわってません(笑) 要望があればメッツォもアルトもやりま すヽ(^。^)丿

音楽とお酒と猫を愛してます(*´▽`*) 美味しいものには目がありません。

レトロゲームや特撮も好物です。

ヴァイオリンは好きだけど弾けませんorz
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2025/05/14 (Wed)
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2018/11/21 (Wed)
さて、懲りずにまだまだ続きます。

※キリスト教徒でもユダヤ教徒でもイスラム教徒でもプロの考古学者でもないただの一般日本人が、聖書を読んで楽しんでいるだけです。
気になったことは本を読んだりネットで情報を拾ったりしていますが、あくまで一般人が手に入れられる範囲です。
多大なる妄想を含んでいます。本気にしないでください。

○第十五章

これらの出来事の後、主のことばがアブラムの幻に出てきました。
「アブラム、恐れるな。わたしはあなたの盾だ。あなたの受ける報いはとても大きいぞ。」
そこでアブラムは言いました。
「神さま、何をくれるっていうんですか。私には子供がいないんですよ。私の家の相続人は、あのダマスコのエリエゼルになってしまうんでしょうか。」
アブラムは更に言いました。
「見てくださいよ。あなたが子孫をくれないせいで、私の家の奴隷が跡取りになっちゃうじゃないですか。」
すると主の言葉が言いました。
「それはだめだね。あなた自身の子孫が跡を継がなきゃね。」
そして、彼を外に連れ出して言いました。
「さあ、空を見て星を数えてごらん。あなたの子孫はこれくらいになるよ。」
彼は主を信じました。主はそれを彼の義と認めて、言いました。
「わたしはこの地をあなたに与えるために、カルデヤ人のウルからあなたを連れ出した主だ。」
彼(アブラム)は言いました。
「それが私のものだって、どうしたら分かるんですか?」
すると主は彼に言いました。
「わたしのところに、三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩とその雛を持ってきなさい。」
彼はそれを全部持ってきて、鳥以外を真っ二つに切り裂き、その半分を互いに向かい合わせにしました。
猛禽がその死体の上に降りてきたので、アブラムはそれらを追い払いました。
日が沈みかかった頃、深い眠りがアブラムを襲いました。そして、ひどい暗黒の恐怖が彼を襲いました。
アブラムに呼び掛けがありました。
「よく覚えておいで。あなたの子孫は自分のものでない国で寄留者となり、奴隷にされ、400年間苦しめられるだろう。しかし彼らが仕える国民をわたしが裁いてあげるから、彼らは多くの財産を持ってそこから出て来るようになる。
あなた自身は平安のうちに、あなたの先祖の元へ行き、長寿を全うして葬られるだろう。
そして四代目の者たちがここに戻ってくる。それはエモリ人の咎が、そのときまで満ちることはないからだ。」
日が沈んで暗闇になったとき、煙の立つかまどと、燃えている松明が、切り裂かれたものの間を通り抜けました。
その日、主はアブラムと契約を結んで言いました。
「わたしはあなたの子孫に、この土地を与えます。
エジプトの川から、あの大きなユーフラテス川まで。
ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、ヘテ人、ペリジ人、レファイム人、エモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人を。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前章で、カナン人たちの戦争に介入し、図らずもカナンに勝利をもたらしたアブラム。
とりあえず夜にお家に帰ってホッと一息ついておりますと、いきなり主からの直通電話ならぬ直通テレパシーが入ります。
「わたしが付いてるからには怖いもんなしだ。君は大きな報いを受けるよ!」
先程の戦での快進撃のことを言ってるんだと思いますが、どうやらアブラムの頭は違うことで頭がいっぱいなようです。若干やさぐれ気味。話を聞きますと、自分の子供がいないのが憂いの原因だといいます。
このままだと彼のお家にいる奴隷の中の、「ダマスコのエリエゼル」という人が跡取りになってしまうそうです。ダマスカス出身のその奴隷、名前は「わたしは神の助け手」という意味です。ここでは話の中でしか出てこないのでどんな人物かは分かりませんが、アブラムは彼が跡取りになるのは嫌なようです。「あんたが子孫をくれないからだ」と神さまに逆ギレしてます。………アブラムほんとキレやすい人だな。
そんなやさぐれアブラムを、神さまは外にアブラムを連れてきて「あなたの子孫はこの空の星の数くらいになるよ」と慰めました。それを、アブラムは特に反論も無く信じました。

アブラムは(私の印象では)すぐ調子に乗るし、考えなしに行動するし、結構怒りっぽい男ですけれども、良いところがあるとすれば『素直なところ』だと思います。
ある意味、考えなしに動くところも神さまに気に入られた要因かもしれません。
神さまに言われたことは全部まるっと信じられる無垢さ。それが、かつてアダムたちに求められたことであり、信徒に最も求められているとされていることなのでしょう。

彼の『信じる』という行為を主は『義』として認めました。
前章で出てきたメルキセデクさんのところで、『義』は『救い』と同義と書きました。それは恐らく神サイドのことで、人間サイドからすると『義』=『信仰』なのだと思います。
前回書きましたとおり、「義( צֶדֶק / tsedeq)) 」という単語は本来「筋を通す・曲がってないこと・まっすぐなもの」という意味です。
たぶんですけども、人間が信仰を曲げず主を信じる心を無条件で持つことが人間の「義」で、それが主の与える「救い」になると言いたいのではないでしょうか?個人の解釈ですけど。

アブラムの「義」をしかと受け取った神さまは、
「わたしはこの地をあなたに与えるために、カルデヤのウルからあなたを連れ出した主だ」
と言います。
要するに、主っていう一人称は「この世のすべての主人」ってことなんで、そのわたしがこの土地をあなたにあげるためにわざわざカルデヤから呼んだんだから何も心配することないよ、と言いたいのではないかと思います。アブラムの「義(信仰)」に対して、「義(救い)」を与えるってことですかね。
この場合の「救い」は、英雄になっても未だ流浪の身は変わらず(土地の所持者と同盟は組んでいて住めるようにはなっているけど自分の土地は無い)、更に子供がいないのでお家断絶の危機なアブラムに「土地」と「子孫」をもたらすことです。

しかし、いきなり他の人に「この土地は俺のものだって神が言ってる」と言っても、「ハァ?こいつ頭おかしいんじゃねーの?」と言われてきたのでしょう。
現代だって、いきなり外国の人がやってきて同じことを言って居座り出したら、お巡りさんを呼ぶでしょう。
神さまが言ってくれたからって、簡単には安心できません。尚且つ、すでにアブラムは結構大きな一部族の族長です。土地の入手は絶対必要事項でしょう。

そこでアブラムは、他の人間にも「ここカナンの土地はアブラムたちヘブル人のものだ」ということをどうしたら証明できるのか?と尋ねます。ここでこんな質問をすること自体が不信の表れだとして、「この時点でのアブラムはまだ未熟者」とする方もいるようです。シビアですねー。
すると神さまは「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩とその雛」を持ってこいと言いました。ずいぶん細かい指定です。

なんで三歳なのかは、よくわかりませんでした。
でもとあるブログで面白いご意見を見つけまして、3年という期間はイエス・キリストの「公生涯」と関係あるのかな?というものでした。公生涯といいますのは、ただの大工の青年として暮らしていたイエスさんが神さまのゴーサインをもらって聖人活動を始めて、十字架にかけられるまでの期間です。
これを当てはめますと3年という年月は「生け贄になるために必要な期間」と解釈することもできます。
他には、「三段階の成長期間(蘇生、長成、完成)を象徴する」という意見もありました。
あるいは単純に「大人の動物」という指定かもしれませんけども。

しかし神さまは「持ってこい」と言ったきり、その後の指示をくれません。
「神さまの言ってることを証明するためにはどうしたらいい?」の問いに対して、ちょっとヒント少なすぎるんじゃありませんかね神さま?

でも、とりあえず持ってこいと言ったからには「生け贄にして捧げてね」って意味なんだろうなー、とアブラムは頑張って生け贄の儀式をやってみます。

《♪~アブラム3分クッキング~♪》
本日のメニュー:神さまへの生け贄
①まず材料はこちら。三歳の雌牛と雌山羊と雄羊、それに山鳩と雛でございます。脂が乗っていて美味しそうですね。

②材料を真っ二つに切りましょう。でも鳥は小さいので切らずにおきます。

③切った材料を、向かい合わせに置いておきましょう。乱暴にバラバラにしてはいけませんよ。

④はい!これでできあがり!!

…となればよかったんですけど。
そこで思わぬ邪魔が入りました。生肉のにおいに釣られて、猛禽類(タカだのワシだの)がやってきて、死体にたかりだしたのです。せっかくの神さまへの捧げ物を喰われちゃたまりませんから、アブラムは必死で追い払います。
この猛禽類、実は悪魔なのではないかという説もあるようです。イヴを誘惑した蛇とおんなじような、お邪魔キャラですね。この時点では特に記載はないので、勿論普通の猛禽類という可能性もあります。
そしてそのまま夕暮れになりました。タカとかと闘って疲れてしまったんでしょうか、唐突な睡魔がアブラムを襲います。更に眠ってしまったアブラムを「暗黒の恐怖」が襲います。
この「暗黒の恐怖」も、「深く眠ってしまったアブラムの夢に悪魔が現れて襲いかかった」説と、「眠ってしまったアブラムが、起きたら真っ暗で超怖かった」説がありました。
まあ電気も無い真っ暗な荒野にひとりぼっちでいたら、悪魔がいなくても怖いですわ。そんな恐怖の真っ只中にいるアブラムに、呼び掛ける声が聞こえました。

「君の子孫は400年間奴隷にされるよ。でもその後そこから脱出してここに戻ってこれるよ。」

………………

残念ながら、アブラムの生け贄は失敗したようです。
(人によっては成功したとみる方もいらっしゃいますが)
「この土地が自分のものだと証明するための方法」を尋ねたのに、向こう400年は余所者のままで、しかも奴隷に身をやつさなくてはならないなんて、なんて理不尽な。でもこの「400年」にも、どうやら理由がありそうです。

では、どこが失敗だったのか。
この時点では神さまの説明が無さすぎてさっぱりわかりませんが、後々この儀式の正解を教えてくれるところがあるようなのです。レビ記とか。民数記とか。
その章を詳しく調べたいところなのですが、一応この企画では頭から順番に読んでいくことにしていますので、ここでは軽く調べるくらいにしておきます。

まず、生け贄の動物たちを真っ二つに切って向かい合わせに置いたのは正解のようです。
どうやらこの行為には「契約を破ったら自分もこうなっても構いませんよ」という契約遵守に対する決意表明、あるいは自己呪詛の意味があるそうな。
また別の解説では、「堕落して善悪の母体となった人間を裂き、死亡の血を流して聖別することを象徴的に行うという意味がある」とのことです。本来切り裂かれるべきは人間だけど、そのかわりに動物さんたちに犠牲になってもらうというわけですね。(動物カワイソ(´・ω・`) )
使った動物も、神さまの指定通りなので正解です。

さて先程の3分クッキング、②の行程に注目。山鳩とその雛は、小さいのでアブラムは真っ二つにせずにそのまま置いときました。
はい、これはブッブ~。生け贄はぜんぶ切り裂かないとダメなのです。大きさは関係ありません。
ある説では「子供が欲しいあまりに、鳩の雛が可哀想で切り裂けなかった」というのもありました。

もうひとつ、④の行程。半分に切った生け贄をきちんと並べて祭壇に置いて、アブラムは「よし完成!」となりましたが、実はコレ全然完成じゃないです。
ホントはそれに火をつけて焼いて、更に一晩中起きててその火を燃やし続けないといけないんです。猛禽類と闘い疲れてたとしても、寝ちゃったらダメです。

これも、状況がそんなに詳しく書いてないので想像するしかありませんが、「生け贄に火を着けようとしたら猛禽類にめっちゃ邪魔された」説や「普通に生肉をお供えしてたら猛禽類が寄ってきた」説があるみたいです。前説ですと、意図的に火を着けるのを邪魔したということで「この猛禽類は悪魔」ということになるようです。

さて、悪魔に邪魔されたとしても、ただうっかり火を着け忘れたり眠っちゃったりしただけだったとしても、どちらにしても儀式は失敗です。
しかしながら、儀式に失敗したらペナルティがあるなんて「そんなん聞いてないよー!」って思ってしまいそうです。
神さまがアブラムに課したペナルティは「子孫が400年よその国で奴隷になる」ということです。
なんで400年なのかの理由ですが、色々調べてみました。
どうやらこの儀式の目的に秘密があったようです。指定された動物たちをただしく捧げるということが証明の条件だったわけですが、この目的が《過去の人間たちの罪のあがない》だったようなのです。


ちょっと話が逸れますが、一番最初に生け贄の儀式をして、成功したのはノアさんでした。方舟から出てすぐ、「 祭壇を築いて、すべてのきよい家畜とすべてのきよい鳥のうちから幾つかを選びとって《全焼のいけにえ》を捧げ」ました。つまりノアは正解を知ってたわけですな。

この《全焼のいけにえ》という儀式は、神さまに「完全な献身と服従」を示すために行われます。
動物も決まってて「若い雄牛」「雄の子羊」「雄山羊」「鳥(「山鳩」か「家鳩の雛」)」と指定が細かいです。
なぜ雄なのかというと、古代イスラエルが男性社会であり、個人単位でなく家族単位で人々を扱う国だからだそうです。家長である男がその家の女やこどもの責任を取る、という習慣が、そのまま表れたかんじです。
「若い雄牛」が一番高価な捧げ物で、「鳥」は貧しい人が捧げるものだそうです。

今回神さまが指定した
「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩とその雛」
の中で、当てはまるのは山鳩のみです。雄の子羊は「三歳」という条件があるので当てはまるのか微妙ですな。

後々形式化される『生け贄』にはあと何種類かありますが、その中で「雌牛」「雌山羊」「雄羊」を捧げる指定があるものは

○和解のいけにえ
○贖罪のいけにえ
○罪過のいけにえ

です。

「和解のいけにえ」は、『神の恵みに感謝する』ために捧げるものです。 祈りが答えられたことへの感謝を表わしたり、何か予期せぬ良いことがあったときに自発的に捧げたりするそうです。捧げられるものは

牛…雄雌どっちでもいい
羊…雄の子供
山羊…雌

です。

「贖罪のいけにえ」は、『良心から罪を取り除くことで神さまとの関係を回復させる』という目的で捧げられます。知らず知らずのうちに犯してしまった罪を赦してもらうために行うものです。
この生け贄は身分によって動物の指定が細かく決められていて

①偉い祭司が罪を犯したら…若い雄牛
②イスラエルの全会衆(信者たち)が罪を犯したら…若い雄牛
③権力者(王や族長)が罪を犯したら…雄山羊
④一般人が罪を犯したら…「雌山羊」か「雌の子羊」か「山鳩二羽」か「家鳩のひな二羽」か「小麦粉」

となっています。

上記の「贖罪のいけにえ」とはまた違う、「罪過のいけにえ」というものもあります。これは神さまのものに対して罪を犯したり、他の人に傷害や損失を与えたりしてしまったときに捧げられるものです。他のいけにえよりも、民法に近いものを感じます。
「罪過のいけにえ」の捧げ物は「雄羊」と決まっています。他の人間に損害を与えた場合は、それに加えてその賠償もしなくてはなりません。

まとめてみますと、今回神さまが指定した動物は

雌牛…和解
雌山羊…贖罪
雄羊…罪過
山鳩とその雛…全焼 or 贖罪

ということになりますね。
なんか和解の雌牛だけ浮いてるような…

雌牛に関しては、上記の生け贄とはまた別に「赤毛の雌牛の生け贄」というものがありました。
罪を清めたいときに、「くびき(牛車に牛を繋ぐための器具)を背負ったことのない、無傷で欠陥のない赤毛の雌牛」を焼いて、その灰を水に溶かして振りかけるというものです。
あと、人が殺されてその殺人者がだれか分からなくて、町の人全員が罪を問われた場合にも若い雌牛が赦しの生け贄に使われたそうです。

まあお話の中では、この時点では細かく形式が決められてない設定になってますのであんまり意味はないのかも。

とあるブログで拝見した解釈では、このアブラムの生け贄は一番最初に人間がやってしまった

アダム
イブ
カイン
アベル

の罪の償いが目的だったとしていて、これまた面白いと思いました。

・蛇に唆されて神に背き、知恵の実を食べた罪に雌牛(イブ)
・無垢なアダムに知恵の実を食べさせた罪に雌山羊(イブ)
・神に背いて知恵の実を食べた罪に雄羊(アダム)
・アベルを殺した罪に山鳩(カイン)
・殺されたことに対して神を恨んだ罪に山鳩の雛(アベル)

彼らの購いをこの生け贄で完璧にできれば、カナンは名実ともにアブラム一族のものにしてもらえるはずだった、というわけですな。
アベルが実際に怨みつらみを言った描写はなかったですけど、「あなたの弟の血がその土地からわたしに叫んでいる」「その土地は呪われてしまったので、何も生むことはない」という第四章の表現から、兄カインや両親の住む土地を呪ったのはアベルということになりますので、やっぱり相当恨んでたんでしょう。
アブラムは先祖4人分の購いに失敗したから、彼らの分まで咎を負うことになった、とまあこういうわけですね。

あるいは単純に、 和解・贖罪・罪過・全焼、と4種類の生け贄ぜんぶに失敗したからかもしれません。
あと、「4代目」まで満ちることはないと言われた「エモリ人の咎」も気になります。

計算方法としては単純に
「1代を100年として×4で400年」
かもしれませんし、
「アダムから10代目のノア(唯一『全焼のいけにえ』に成功した人物)から更に10代目なので10×10で100年、それを4人分ないし4代分償うので100年×4」
かもしれませんし、それともこのあとの話になりますが
「望み通りアブラムに子供が生まれるのがアブラム100歳のときなので100年×4」
かもしれません。
考え方は色々ですな。

…個人的にはですけれども、生け贄にされた動物たちもなかなか意味深だなーと思ったりします。

雌牛は女神イシュタルの象徴で、満月と共に女性のモチーフになっています。月は死と成長、そして女性の月経の表現も担います。豊穣、愛欲、戦などを司り、イシス、アフロディーテなど各文明の豊穣女神の雛形ともいえる女神さまです。

雌山羊は、前回でも少し触れました女神アスタルテととても深い関係があります。角が生えているので雌牛とされる場合もありますが、おそらく現代に至るまで山羊のイメージの方が強く付いていると思われます。ちなみにアスタルテをモデルに生まれたギリシャのアフロディーテも雌山羊に乗った姿で描かれたりします
(「クトゥルフ神話」には、アスタルテをはじめとする古代からの豊穣女神をモデルにした外なる神の一柱「シュブ=ニグラス」がいます。「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」「万物の母」などの異名を持っていて、ワルプルギスの夜に祀られる悪魔の原型ではないかとも言われているそうな。)
繁殖の神であると同時に死者の霊魂を治める役割も持っていたアスタルテは、天に住んでいると思われていて「星の女王」と呼ばれることもあります。子供である星に囲まれているとして「月」が彼女の本体とする場合もあります。このあたりはイシュタルに引き継がれていますね。
また雌山羊は星座の御者座にも描かれています。古代エジプトがシリウスを見て暦を決めていたのと同じように、古代メソポタミアは御者座の一等星カペラを見て新年を決めていました。カペラは「雌の子ヤギ」という意味です。ラテン語のカプラから来ています。
5000年前のメソポタミアの頃からヤギを抱いたおじさんの絵が描かれており、それがのちにギリシャに渡って御者座と名付けられたと言うわけです。
カペラはのちのギリシャ神話で、ゼウスを育てた乳母であるアマルティアとなります。父クロノスから逃れてきた赤ん坊のゼウスは、クレタ島のイーデー山の洞窟でアマルティアに乳をもらって育ちます。(アマルティアはニンフの姿で、山羊の乳を飲ませて育てたとすることもあります)

雄羊は、以前ニムロデのことを調べたときに出てきたドゥムジが牧羊の神でした。
http://katzeundgeige.blog.shinobi.jp/mouso/聖書を楽しむ【7】
シュメールの中でも古い神に属するドゥムジは、アッカドではタンムズ、エジプトでは創造神クヌム、フェニキアではアドニスです。アドニスはのちにギリシャに渡ってアフロディーテの愛人になります。
母セミラミスの処女受胎も手伝って、イエス・キリストの雛形とも言える神ですね。
クヌムはエジプト内のある宗派では唯一の創造神として扱われるほどの力を持っていた神さまで、のちに主権を握る太陽神ラーが冥界を渡るときに雄羊の姿になるのは、この古い信仰の名残とされています。エジプトでは、羊は太陽と深く結びつけられていたようです。 更に後に主権を握る太陽神アメン(アモン)も、新王国時代( 紀元前1570年頃~紀元前1070年頃)には雄羊の姿をとるようになります。アメンは「神々の主」とされ、のちのギリシャではゼウス、ローマではユピテルと同一視されます。
「悪魔はあんまり知らないけど、この絵は見たことあるー!」ってくらい有名な《メンデスのバフォメット》も、元はエジプトのメンデスで祀られていた バ・ネブ・デデトという神さまです。ほんとは羊の神さまだったのに、歴史家のヘロドトスさんが山羊だと間違えて書いてしまったせいで、すっかり山羊の悪魔なイメージがついてしまいました。
ちなみに古代バビロニアでは「男」と「羊」が同音異義語「lu」だったそうで、「牡羊座」は昔は「農夫座」だったらしいです。

鳩は、古代シリアでは豊饒と出産を司る女神の聖鳥とされています。その女神とは、先程タンムズのところで名前が出ました、セミラミスです。一応伝説上の女王ということになってますので、神に数えてよいものか微妙ですけども。セミラミスは、アッシリア語で「鳩」を意味します。
セミラミスは半身半魚の大女神デルケト(ペリシテではアタルガティス)の娘です。デルケトは古代シリアの豊穣女神で、月神でもあります。アフロディーテはこの女神の性質も濃く受け継いでいると思われます。(海の泡から生まれたところとか)西洋に伝わる、所謂「人魚」も、元はこの女神だったかもしれません。
その娘であるセミラミスも、地域によっては下半身が鳩の形態をしていたりします。この二柱が信仰されている現地では、魚と鳩の食用は禁止になっていたそうです。ゼウスとヘラを祀った神殿にも金の鳩を戴冠しているセミラミス像があったといいます。
デルケト信仰の中心地は、現在まさにドンパチやっているアレッポ県の、マンビジ(マッブーグ)という町でした。昔のギリシャ人たちにはヒエラポリス・バンビュケ「聖なる都市バンビュケ」と呼ばれました。
第10章でセムの子孫マシュを調べたときに出てきた、コンマゲネ地方ですね。ミュグドニア人も関係しているのでしょうか?
http://katzeundgeige.blog.shinobi.jp/mouso/聖書を楽しむ【10】
デルケトの信仰の儀式はこれまた大宴会を催しての乱痴気騒ぎや自傷行為などが行われるもので、神殿では男根崇拝がされていたとのことです。具体的に言いますと、イチモツをかたどった巨大な像が神殿の前に建ってて、年に一度よじ登るというイベントがあったり、木や青銅で出来た小さなイチモツ像を崇めたりしていたそうな。
そんな女神の娘ですので、セミラミスも結構奔放なお人だったんではないでしょうか。美貌と英知を兼ね備えていた説と贅沢好きで好色で残虐非道だった説があるそうですが、意外とどっちも合ってるかもしれません。デルケトと無名のシリア人、或いは河の神カユストロスとの間に生まれたセミラミスは、生まれて間もなく河辺に捨てられてしまい鳩によって育てられました。(女神さまには子育ては向いてなかったようです)その後成人したセミラミスの伝説は、以前ニムロデの所で述べた通りです。太陽神ニムロデの妻であり、その生まれ変わりであるタンムズの母であるセミラミスは「天の女王」「月の女神」など、他の女神と同じような役割を担います。(一説では、亡くなったとき鳩の姿になって天に昇っていったそうな。)

まとめてみますと、

雌牛…イシュタル(月神、愛欲、戦、豊穣女神)
雌山羊…アスタルテ(月神、繁殖、豊穣女神)
雄羊…ドゥムジ(太陽神、牧神、創造神)
鳩…セミラミス(月神)

アスタルテ≒イシュタル≒デルケト(アタルガティス)
だとすると、セミラミスはその娘。さらにドゥムジ(タンムズ)はセミラミスの息子ですが、イシュタルの夫です。つまりセミラミス=イシュタルで、結局、名前と信仰される所と時代が変わっただけで元々の神は二柱しかいません。
……もしもこの生け贄が、旧体制の神を殺す目的で行われたとしたら如何でしょう。一神教を広めたいこのお話の作者たちにとっては、遥か古代から、それこそ人間史が始まってからずっと崇められてきた神さまたちほど邪魔なものは無いでしょうからね……

ちょっと妄想が過ぎましたね!(爆)

ずいぶん長くなってしまいました。まあとにかく、アブラムの生け贄は失敗しましたので、アブラムの一族にはペナルティが課せられることになりました。
「子孫が400年間、よその国で奴隷にされる」
という内容ですが、しかしながら現時点ではアブラムに子供はおらず、そのことをついさっきまで主に愚痴っていたくらいです。つまりひとまず直系の子孫は与えてくれるということですね。そしてアブラム自身は自分の国をその目で見ることは叶わないけど、天寿を全うして先祖と同じところ…アダムとかノアとか、過去の聖人たちの所に行けるということでしょうか。
(神さまのところまで連れていってもらえたエノクのところまでは行けないということか…)
400年の期間が過ぎたら、君の4代目の子孫が戻ってくる、ということは4代後にはこの土地はアブラム一族のものになるよ、ということですね。

アダム夫婦追い出し案件もそうですが、一応神さまなりにかなり救済措置を取ってくれています。
本来なら「もう二度とこの土地はお前たちのものにはならん」となるところを、400年延ばしただけにしてくれたわけです。
で、日が沈んで真っ暗になった瞬間にどこからともなく煙を吹き出しているかまどと燃えた松明が現れて、切り裂かれた生け贄たちの間を通り抜けた、とあります。
かなりの超常現象です。いきなりかまどと松明がフヨフヨ浮いて現れて、置いてある生肉の間をスーっと通り抜けるってシュールですね…

ちなみにこのとき初めて真っ暗になったってことは、アブラムを襲った「暗黒の恐怖」はやっぱり隠喩的なものなんですかね?
それとも夕暮れ時特有の気味悪さ的な怖さですかね?
諸説ありますが、筆者はどんなつもりで書いたんだろう。

さて、この「火が生け贄の間を通り抜ける」というのは、本当ならアブラムが生け贄を燃やさなきゃいけないはずだったんですが仕方ないので主が自力で生け贄を受け取ったことにした、ということだそうな。
アダムとエバのときも、主は皮の服を渡して生け贄の代わりにしてましたね。世話の焼ける一族です。
無理矢理生け贄を受け取った主は、改めてアブラムに契約を言い渡します。
「わたしはあなたの子孫に、この土地を与えます。
エジプトの川から、あの大きなユーフラテス川まで。
ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、ヘテ人、ペリジ人、レファイム人、エモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人を。」
エジプトの川……つまりナイル川でしょうか。そこからユーフラテス川まで君の子孫のものになりますよ、そこに住んでる人々も君らのものですよ、というわけですね。
これまた初めてみる人種がいっぱいです(爆)
もちろん見たことある人種もいますね。第10章で調べといて良かったー。


・ヘテ(カナンの子孫)=ヒッタイト人(アナトリア半島/紀元前1680年頃~紀元前1190年頃)《前1200のカタストロフ》により滅亡=フルリ人?

・ペリジ人…第十三章にちょびっと名前だけ出てきたカナンの先住民。ペリシテ人とは無関係、詳細不明

・レファイム人…第十四章でメソポタミア軍に倒された、アシュロテという町に住んでいた人々、詳細不明

・エモリ人(カナンの子孫)=アムル人(シリア地方ビシュリ山周辺~メソポタミア各地/紀元前20世紀~紀元前13世紀末)バビロン王国などが有名、純血のアムル人は《前1200のカタストロフ》で滅亡

・カナン=フェニキア人(現レバノン/ 紀元前15世紀頃~)

・ギルガシ人(カナンの子孫)=エリコ付近の住人(現ヨルダン川西岸地区の町/紀元前8000年紀~)現パレスチナ自治区

・エブス人(カナンの子孫)=エルサレムの先住民(エルサレム/紀元前1900年より前~)

ほとんどカナンの子孫ですね。
今章初登場なのは ケニ人、ケナズ人、カデモニ人の3種族です。ひとつずつ調べてみます。

ケニ人はパレスチナの遊牧系民族だそうですが、どういう血脈の人々なのかはわかっていません。アラバの涸れ川沿いに移動しながら暮らしていたそうです。
「ケニ」という名前がアラム語の「鍛冶屋」という意味だとか(アダムの息子カインと同じ名前ということですかね)、いやいやヘブライ語の「巣」という意味で彼らが岩の上に住処を築いていたことを指しているんだとか、色々な学者さんが考えているようですが答えは出ていません。

ケナズ人は、これまたよくわかりませんでした。
名前の意味を調べるサイトで見たら、ヘブライ語で「明確な」って意味だったんですが、名前に反して何も明確でないです(爆)
どうやらこの先のアブラムの子孫から出てくる民族名みたいですが、ということはこの時点ではまだ存在してないということですかね?わからん…

カドモニ人もよくわからなかったです。orz
シリア砂漠に住んでたんじゃね?という説もある、遊牧民族だそうです。名前がヘブライ語で「東」という意味なので、東の方にすんでる人たちを指してるのではないかという人もいらっしゃいます。

とりあえずこの3部族はよくわかりませんでした!(爆)

まあ、要はこの時代における「現代」にカナンに住んでる人々はアブラム一族の支配下になるよ、と言いたいんでしょうね。
元々住んでる人たちからしたら、いい迷惑ですね!

では今回はここまでです。

今回の楽曲は17世紀イタリアの作曲家カルロ・ドナート・コッソーニ (1623~1700) 作曲のオラトリオ《アブラハムの犠牲》。
聖ペトロニオ大聖堂のオルガニストやミラノ大聖堂の楽長を勤めたコッソーニの作品です。天使とアブラハムと、まだ出てきてないですけどアブラハムの息子のイサクの対話で話が進みます。
スイスのアインジーデルン修道院 図書館に残されていたそうです。

《アブラハムの犠牲》より サルヴェ・レジーナ・シルヴァルム
https://youtu.be/ReDBJUP8HOs


ではまた次回!

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